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「中田大学」の歴史動画見たけど個人的にはすごく面白いと思う……がゆえに感じた問題点について指摘しておきます

まずはじめに。


投資情報You TuberであるZeppyちゃんねるによると、20分で広告が3回入る動画が110万再生されるとYou Tubeから入る収入は90万円程度だったそうです。*1


中田さんの動画は1動画あたり100万再生を超えているものが何十本もありますね。とんでもない世界です。


私が見たのは鎌倉時代解説動画。
www.youtube.com

個人的には、取り組みとしてはめっちゃ良いじゃんと思った。

間違ってる点や古い点は、ちゃんとチェック受けた上で動画内で編集して修正入れればいい。それもコンテンツの一部にすればいいだけだ。そのチェックや修正をやらないならNGだけど、そういった問題点さえ克服できる、仕様とするのであれば動画シリーズそのものは応援できる内容だと感じました。

「この動画を見て喜ぶような奴はどうせ低レベルな人間だ」みたいなコメントも見かけましたが、一応過去に受験で東大文Ⅰに合格している人間として、まじめに受験勉強やった人間だけどこの動画悪くないよって言いたいです。

私もともと古典や歴史については学習漫画で勉強するのめっちゃおすすめしてますし、投資入門書としてがちがちの海外翻訳本よりもまず最初にワールドエンドエコノミカを読んで!ってずっと言ってるくらいです。
www.tyoshiki.com



とはいえ問題点がないわけではなく、この分野は「学習の起点として、興味関心を持つ一番最初の大事な地点」なので確かな品質が求められると思っています。一般の本よりも求められる品質は高くあるべきだと考えています。そう考えるといろいろと問題あるのに、中田さんが必要な対応を取っていないのでやはり支持はできません。

せっかくいい取り組みだと思うので、自分が問題点だと感じ、それに対してこうしたらいいんじゃないかと思ったことを書いておきます。


中田大学のリスク① 一冊の本を読んでそのまんま語ってるので、参考にする本次第で相当中身がブレる

中田敦彦は動画を作る際、自分が元から持っている知識を喋っているのではなく、動画撮影前に一日ほどの時間を作って講義内容について勉強し、その瞬間の熱でしゃべっていると話していたため、「全てを完全には理解していない」「解説が充分でない」部分があるのは確かだろう。また、既存の本の内容で勉強しているため、その本の解釈が他と違っている場合もある。

https://logtube.jp/entertainment/59325

これは出展を明示すればいいというものではない。本のチョイス自体がかなり重要になる。さすがに本のチョイスだけは中田さんの好みじゃなくてちゃんとした人のチェック受けた方がいいと思った。また、まともな本を選んでも、いろいろと面白おかしくするために「独自解釈」や「勝手なキャラ付け」などが行われている。ここもチェック無しでそのまま垂れ流しというのはちょっとまずいと思う。

そういう時に現状のように「出展を明示してるんだからOK」という態度なら批判は免れないでしょう。でも、これもちゃんと批判されたときに編集で修正コメントを入れればよいだけの話であり、致命的な問題ではないと思う。

というか、Tryの動画もそんなに内容は変わらなかった

今回に関していえば、参考にしてる本が2008年出版の本ってのはちょっと微妙かなと思う。

例えば元寇に関して「神風が吹いて勝利!」っていう説をいまだに採用してるところが気になった。これは最近では日本側の激しい抵抗があったことや、そもそも主力部隊ではなかったという説が有力になっており、そういったアップデート部分については、何かしら監修を入れた方がいい気がする。 それこそ「しんざきおにいさん」みたいな感じで動画の後に「〇〇先生チェックのコーナー」とか「〇〇先生によるワンポイント補足」みたいな形で短く突っ込まれたり補完した方が面白いんじゃないだろうか。これだけ面白い動画を作れるのだから「訂正」部分についてうまいことコンテンツとして昇華してほしい。

とはいえ、Tryの上げてる動画でも同じ程度の解説しかない。
www.youtube.com

つまり、受験日本史としてもこれで問題ないということだ。そりゃそうか、問題があるなら参考文献の本も2008年からアップデートしてるはずだもんね。



中田大学のリスク② 「きちんとした教科書がないor教科書通りだと面白くない」などの理由で中田さんの独自解釈が強くなると、間違ったことをいう可能性が飛躍的に高まる

今回突っ込まれてたのは「イスラム教」や「世界史の中東近現代史」の部分。

togetter.com


ここが問題なんですよね。

ツッコミポイントの一例

中田さんは鎌倉時代の動画でも当時の仏教の問題を語っていて、その時に「細かい名前覚えなくてもいいからなぜそういうことが起きたのかを理解しよう」と語っている。それ自体はとてもいい話だ。アクティブラーニングの思想に近い。中田さんが理想とするスタイルは本当に応援したい。 でも、そのスタイルを志すのであれば中田さん自身の理解が浅すぎる上に、そこで勝手に話を作ってしまうので間違った理解を植え付けられてしまう。


鎌倉仏教の話をするのであればまず「末法思想」の説明が必須である。 

①今までの仏教が国家向けのものであり民衆のものではなかったが、時代の権力が貴族から武家へ移り変わっていったことから、京都の貴族とは別の宗教が権力基盤として要請されたこと 
②治安が乱れ、現世がつらいものとなったため「末法思想」が民衆に広がり、民衆も宗教の救いを必要としていたこと 
③「武家」や「民衆」が宗教を必要としたことにより、敷居の低い、かつ「現世ではなくあの世での」救いを語る仏教が求められるようになったこと 
④しかし、鎌倉仏教が生まれたのは鎌倉時代だが、実際には北条家の支持を受けた「臨済宗」のみが盛んになり、それ以外の宗教は南北朝時代にようやく民衆に敷衍していったこと

本当に流れを理解するというのはこういうことじゃないかなと。これらをすべて説明しなければいけないといってるわけじゃないが、少なくとも中田さんはこれらのことを理解してから話をしてほしい。

こうした点を踏まえた上で中田さんの動画における仏教解説だけを見ると、多分そもそも末法思想のことを知らずに語ってるように思う。(教科書には書かれてるはずだが)


中田大学のリスク③  間違ったことを言う可能性が高いことを本人ですら自覚している割に、現時点ではそのチェックにコストをかけていない

この③が最大の問題です。どんな形でもいいけど、間違いがあったら最低でも事後にちゃんと修正などで対応する。可能であればきちんと監修を入れるなどきちんと対応しないのであれば、どうあがいても擁護しようがありません。

ここで「出典を明示しているのだから問題ない」という主張をしている人がいますが論外でしょう。じゃあ出典明示してればどんなでたらめ書いてもいいんですか?そもそも読者が全部チェックしなきゃいけないんですか? ありえないでしょ?むしろ出典書いてその出典で書かれてないことをしゃべっちゃってるわけで、それは著者にとってはすごい迷惑じゃん。

この点を良いとしてしまうのであれば、ちょっと「製造責任」に対する意識が低すぎる。


当たり前ですが、こういった点のチェックのコストは中田氏が負担すべきです。専門家が自発的にチェック作業をやれと言ってる人間はアホです。専門家に金払ってチェックしてもらう責任があるのは中田さんです。そのコストを負担せず間違ったことを垂れ流しているのであれば、間違った内容を流して指摘された際にそれを否定できない場合、その都度動画を消して再アップロードしなおさなければいけません。これに対して訂正のコストを指摘する側に要求するのは論外です。

逆にあらかじめその「チェック→修正」のプロセスを動画制作の一工程として組み込むようにできるなら、私は中田氏の動画はすごく面白くなるんじゃないかと思うし応援したいと思います。



www.tyoshiki.com
ワンピースの話に通じるものを感じますが、「歴史」についての話なのでそれと比べても少し深刻かなと思います。


残念なことに、現時点では面白いけど他人に薦められない状態です(´・ω・`)

現時点では、今後チェックをちゃんと入れるとも言わないし、それどころか致命的な誤りを指摘された部分についても修正すらしていないようです。
news.yahoo.co.jp

この状態では他人にお薦めすることはできません。今後中田さんがどのような対応をされるのかで中田さんという個人の信頼性が問われる局面だと思います。

まだ確認していませんが、新しい動画になればなるほど、中田さんが教科書をちゃんと読んでなくていい加減な話になったり、勝手に話を膨らませてる部分が多いという声を聴いております。そうなると、途中まで良かったぶんも含めて製作者の姿勢に問題があるから全体がダメだと言わざるを得ないでしょう。



中田さんには、一通り教科書を読んだ上でぜひこの本を底本にしてもう一度歴史動画を作ってほしい

10時間で歴史に強くなる 東大の日本史ワークブック

10時間で歴史に強くなる 東大の日本史ワークブック

  • 作者:相澤 理
  • 出版社/メーカー: かんき出版
  • 発売日: 2016/05/18
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

「東大の日本史」っていうと名前だけでハードルが高いと思うかもしれないじゃないですか。そうじゃなくて、この本は中田大学の理想が詰まってる本なんですよ。

MARCHや関関同立レベルの問題が今までこういう考えさせる問題ではなく暗記主体ゲーになっているせいで、東大や京大はもっと暗記ゲーなんだろ?って思ってるかもしれませんが東大の日本史は、細かいこと覚えなくていい。(最低限はおぼえてるのが前提だけど)それよりも「なぜこの時こんなことがあったのかを考えなさい」っていう問題なんです。

toyokeizai.net

こういう問題こそ、タレントである中田さんの才能が本当に生きる世界だと思うんです。歴史ってこういう風に考えたら思い白いやん!の詰まったこの本を、中田さんにもっと広めてほしい。 

申し訳ないけど、現状の中田大学の歴史動画は、つまらない教科書を脚色とかして小手先の話術で無理やり面白くしてるような感じです。そうじゃなくて、本当に面白いものなんだという実感を持ってそれを視聴者の人と共有していってほしいなと私は思います。