1話目からかなりえぐい。
大学研究者であった父は「自分の手で名馬を作る」という夢に没頭し、その夢に家族を巻き込む。
その結果、妻を過労で死なせてしまう。
ショックを受けて一度はその夢を捨てようとするも、妻は妻で夫の「夢」をかなえることが夢だった。
その妻が死んでしまった以上、もはやその夢を途中で投げ捨てることは絶対に許されなくなった。
夫だけでなく息子・マモルまでその「夢」によって完全に縛られ、狂ってしまっている。
その夢に狂った親子の想いを背負うことになるのが「マルス」という馬だ。
しょっぱなからハードルだらけ
①母親になつきすぎて人間を一切信用しない。
→母乳しか飲まず衰弱死しかかっていたので力づくで取っ組み合って、無理やり牧草を喰わせる。
②父が個人で所有する馬から生まれたので馬主を見つけるのも一苦労。
→結局研究に巻き込んで死なせてしまった妻である結の父親に頼ることになる。
③育成牧場ではその小さな体躯のせいで同期の馬にナメられる。
→根性で坂路を登りきるパフォーマンスを見せて認めさせ、小さい身体ながら当歳の中でリーダー的存在になる。
サンデーサイレンスよりやべー「凱旋門賞馬・シルフィード」産駒である白の一族と邂逅する
・現時点ではまるで勝負にならないほどの力の差を見せつけられるも、マルスの心はおれない。なお、この時仲間の一頭が競り合ってつぶさされてしまい、その雪辱もマルスの闘志につながっていく。
・しかし白の一族に対して敵愾心をむき出しにしすぎて追い出されることに
日本一の設備がある日高の牧場を追われ、天荒牧場を訪れる
・かつて三冠馬レッドドラゴンを育てた名調教師ながら、ドーピング疑惑で競馬界を追われた人物
・最初は胡散臭い人物に見えたが誰よりも真摯に馬を育てる人間であることを感じ取り、彼を信じてマルスを預ける。
まさかの育成シーン全カット!
1年半後、息子・マモルは競馬学校を卒業し騎手デビューする
・谷村厩舎に所属。谷村氏はもともとレッドドラゴンに騎乗していた騎手。調教では完璧な騎乗を見せ期待されるがデビュー後6連続2位。
・もうだめかと思ったところでマルスが入厩。走りの中で自分の欠点を克服する。
その後は順調に走り2桁勝利を達成する
いよいよマルスがデビューすることになるが、「悪役二人(河原崎調教師と後藤オーナー)」が結託してマルスをつぶしにかかってくる
・追切でいい走りを見せて期待を集める。
・一方で、ここまで完璧にマルスを仕上げてくれた天荒は自分の過去がマルスに傷をつけることを恐れて退こうとする。
・実際には当時天荒の兄弟子だった河原崎という人間が薬物事件の犯人だった。河原崎の下で働いていた人間がそのことを告白したことで天荒の疑惑は晴れる。
・しかし河原崎は、厩舎に馬を預けてくれている後藤オーナーと結託してマルスをつぶしにかかる。
今だったら安易すぎてそっぽ向かれそうなベタな悪役イイゾコレー
いよいよデビュー戦
・マルスの馬体は仕上がっているが400kg程度、それに対して後藤の差し向けたライバル馬は480kg。
・妨害により馬群で消耗させられ、それを嫌う形で100m以上大外を走らされるがそれでも差し切って勝利。
・馬群でのトレーニングをしたことがない弱みは今後の課題ではあるが、関係者にその存在をアピールする。
真の敵である白の一族の4頭が日本レコードでデビュー
・芝・エルアルコン
・ダート・エルディオス
・コースの操る兄弟・エルルナ・エルソル
馬だけでなく騎手も「亜門兄弟」という強敵が現れる。この二人が白の兄弟に騎乗してマモルに立ちふさがる
・一方マモルは河原崎厩舎の依頼でトーゴウディックという馬の騎乗を務めるが、この馬が斜行癖があったことで他の馬を進路妨害してしまう。
・危うく長期騎乗停止処分で3歳函館Sにも出場不可になりかかるが、同じレースを戦った市松騎手の証言で命拾いをする。
河原崎くん、いじわるするときは割と有能だったけどやりすぎて自分にとばっちりが
本作は「風のシルフィード」の12年後を描いた作品
後に凱旋門賞を制した「シルフィード」が日本国内で唯一敗れた馬がマキシマム。
この馬の親がディングル。
日本国内に残る唯一の血統が「ディングル→ヘルメス→マルス」。
前作の主人公シルフィードの産駒が、SS産駒のように日本国内を席巻する中、前作シルフィードの唯一のライバルだった側の血統を持つ馬が主人公として彼らに立ち向かうという展開なのね。
主人公の立場が逆転するという展開は、マキバオーと同様でなかなか熱い!
というわけで、この作品の位置づけもわかったところで次に続く~。

- 作者:本島幸久
- 発売日: 2014/10/17
- メディア: Kindle版
DMMブックスで半額になってます(5月19日まで)