平穏な時代の政府の基盤は徳であり
恐怖政治の原動力は徳と恐怖なのだ
徳のない恐怖は不幸を招き、恐怖のない徳は無力である(1794年2月 ロベスピエール)
フランス国民はオリンピックの開会式でマリーアントワネットの首チョンパをやったくらいだから「革命」こそ愛しているのだろうが、その割には立役者だったロベスピエールの名誉復権もせず、サン・ジュストに墓も与えない。
フランス国民が誇りに思っている革命とは一体なんなのだろうか。良いか悪いかではなくて、フランス人の感覚が私にはいまいちよくわかってない。
ただ、当時の革命家はそのことを覚悟の上で戦ったのだろうとは思う。
フランス革命は近代の西欧における初の市民革命であり正解なんてなかったから、とにかく困難続きだった。その困難に立ち向かいそれを曲がりなりにも乗り越えた事自体はそれだけでも圧倒的な偉業ではあるだろう。
ただ、そのための犠牲はとても大きかったし、それに目を背けることは出来ない。
・・・そんなわけで4巻。
今までと違ってかなり残酷な描写が多い。残酷描写の部分は後半部分に隠してまとめておくので、読みたい人だけ読んでください。篠原先生の作品といい、少女漫画の歴史漫画はこういう描写から逃げない印象がある。
一度ドイツに亡命したが、再びヴァンデからフランスのパリを目指す
しかし、ヴァンデーの地は「地獄部隊」の手によって蹂躙されていた。
主人公のショックをうけた表情も見てて辛いので読みたい人だけが読んだほうが良いと思う。
まずは調子に乗ってたエベール派が全員処刑。寛容派と連合する流れと思われたが・・・?
反動的な王党派やブルジョワジー寄りの政策を推進する右派の政治家などを卑語を駆使して激しく攻撃し、サン・キュロットの代弁者として頭角を現した。
エベールは、第三のギデオンという作品ではすごく下品な言葉で有る事無い事を騒ぎ立てる暴露系YouTuberみたいなものとして描かれている。
マラーが殺害された後の革命中盤では、アンラジェ(弱者◯◯の集まりみたいなやつ)を吸収して過激派として最右翼のポジションを確保し、革命をサポートする役目を担っていた。
しかし国民公会は貴族への憎悪を煽る為にさんざんエベールを利用しておいて、革命が安定してきたら用済みとしてあっさり処分した。
なお、エベールは弱者の味方として振る舞っていたが、本人は私服を肥やしまくっていたことが判明していたことが判明し、最後は袋叩きにされた。
現代の我々も同じような人を人気者にしてしまっているよね。本当に人類ってテクノロジーと社会体制以外はそんなに進歩してない(するわけがない)ということがよく分かる。
次に寛容派だったダントン派も処刑。恐怖政治が加速することに
これがまた無茶苦茶で、法廷の形式は維持しつつ、抗弁すら許さないという法律ができていた。
罪があったかなかったかではなく良き市民と悪い市民を分けた時点で地獄への道は止まらなくなった。
1794年7月に対仏連合軍に勝利したとたん、国民はもう恐怖政治に我慢しなくなった
戦争が終わった瞬間に、人々はジャコバン派を暴君呼ばわりした。
サン・ジュストは人間の本質を無視して一足飛びに理想を追い求めすぎた
この辺りはエドマンド・バークが痛烈に批判している部分だ。
これがタイトルの「杖と翼」だ。
人間は翼を持たない。しかし杖を持って長い道を歩むことはできる。杖は保守思想であり、翼はリベラルと言ったところか。
対仏連合に勝ってわずか1ヶ月後にテルミドールの反動 ⇒翌日即座にロベスピエールを処刑
そして今度はジャコバン派への粛清の嵐が始まった。
ジャコバン派は革命を成功させるためのやむをえない犠牲として散々色んな人を粛清してきたのに、虐殺を実行するようなやつを最後まで残し、そいつらに裏切られて終わった。
結局民衆は「旧体制を破壊できて戦争に勝てれば誰でも良かった」のだ。
しかしこのような急速で暴力的な革命が安定するはずがない。突如権力を手にした民衆は考えなしに親である国王を殺し、貴族たちを殺しまくった行ったツケを支払うことになる。
このあとバークの予測通り保守反動を経て、ナポレオンによる軍事独裁が起きた。
その後もフランスは何度も帝政と共和政を行き来した。フランス革命が本当に定着するまでには実に100年以上の時間を必要とすることになる。
彼らが愛国や革命のために虐殺を容認する気質は現代でも残っているといえる。今回のオリンピックではアルジェリアの選手団が抗議のパフォーマンスを行った。
ここから先は残虐描写があるため伏せておきます。