頭の上にミカンをのせる

「命令されなきゃ、憎むこともできないの?」(ブルーアーカイブ#3 エデン条約編3.私たちの物語)

最近のこのブログのお気に入りは「アークナイツ」です
アークナイツ
kindleセールの紹介
新NISA解説ブログ
発達障害

「魍魎の匣」事件のまとめと感想 パラノイアの群れの中心に、一人だけ存在した無垢な少女を襲った悲劇

・この世にはね、不思議なことなど何一つ無いのだよ、関口くん。
・種も仕掛けもないよ。僕は知っていたからわかったのさ。
・物事は、全てにおいて最初が肝心なんだよ、関口くん。
・旦那。この場は僕の言うとおりにしたほうが、身のためだよ。
・一瞬でも信用してしまったら、貴方の負けだ。これが、呪いという、あなた方の分野では扱えない僕の唯一の武器だ。
・幸せになることは簡単なんだ。人をやめてしまえばいいのさ。

長年読んでみたいと思ってた京極堂シリーズ。
最も有名な作品であることもあり、てっきりこれが一作目だと思ってよみはじめたわけです「???」と戸惑う箇所が結構ありました。

途中でこれ二作めやん!!と気付きましたが時既に遅し。面白いので最後まで突っ走ってしまいました。 みなさん、一作品名は「姑獲鳥の夏」ですよ!気をつけてね! (間違えるやつなんておらんやろ)


追記:コミック版がめっちゃいい出来だったので、原作既読の人も、ネタバレだけ読みに来た人もぜひ読んでみてほしいです。

魍魎の匣 コミック 全5巻完結セット (怪COMIC)

魍魎の匣 コミック 全5巻完結セット (怪COMIC)

  • 作者:志水 アキ
  • 発売日: 2010/07/26
  • メディア: コミック

楠本頼子サイド

・楠本頼子の親は「穢封じ御ハコ様」の信者。
・親友である柚木加菜子がホームから転落し、電車にひかれる。
・美馬坂研究所所にて治療中、柚木加菜子の姿が消える。
・黒い服の男、手袋をした男が柚木加菜子をホームから突き落としたと証言。



警察(木場)サイド

バラバラ殺人。

一人目。不明。???
二人目。埼玉の教師の娘。浅野晴子。
三人目。千住の会社員の娘。小沢とし江
四人目。川崎の写真屋の不良娘。柿崎芳美。

・被害者の母親は、それぞれ全員同じ宗教「穢封じ御ハコ様」に入信していた。
・被害者は、黒い服を来た、手袋をはめた若い姿といたところが目撃されている。


カストリ雑誌「実録犯罪」(関口・鳥口)サイド

・三鷹の新興宗教「穢封じ御ハコ様」という霊能者について、京極堂こと「中禅寺秋彦」に相談。
・バラバラ殺人の被害者はみんな「御ハコ様」の信者。しかも、宗教への喜捨額が少ない者の娘が失踪している。
・寺田兵衛(霊能者の本名)は「魍魎」を封じるという手法で信者を増やす。
・関口が、信者一覧に「久保竣公」の名前を発見する。

一方ではわけのわからないものにイメージが肥大していき一方では真実しやかな具体像が語られる。結局魍魎は、山野沢川の精であり、水神であり、木石の怪で、にもかかわらず、巷間に一番馴染んだ姿はこれ、屍を食らう子鬼だ。

・京極堂は、「おはこ様には、寺田兵衛の裏側に黒幕がいる」と、断言。



榎木津礼二郎サイド

・柴田財閥の血縁柴田弘弥と柚木陽子(美浪絹子)の間に加菜子を出産。
・雨宮という男が柚木陽子と柚木加菜子を14年間監視。
・柴田財閥の総帥が、遺産を全て柚木加菜子に譲ると遺言をして二日前に死亡。
・柴田が死んだ日が先か、柚木加菜子が死んだのが先かを確認する必要。



ということで、4つの視点がリンクして物語が進展する。

今回の4つの事件(①柚木加菜子殺害未遂事件②柚木加菜子誘拐「未遂」事件③須崎殺害及び加奈子誘拐事件④連続バラバラ死体遺棄事件)は、連続したものではない。


共通点か因果関係はあるが、本質的には無関係だった。互いにその姿をくらまし合っていただけだ。そのうち、幾つかの事件はもう終わっている。バラバラ事件だけが現在進行系の事件だ。そして、その真相を暴くことが賢明とは思えなかった。



そうすることで不幸になるものはたくさんいるが、幸せになるものは一人もいない。しかも、本当に糾弾すべき人間は、法的には無罪で犯人たちは皆ある意味被害者でも有る。それでも真相は究明されねばならないのか。


まず「バラバラ殺人」の犯人はあっさり判明する。

しかし、この作品の本領は、あくまでその後の「憑物落とし」の部分でありましょう。以前にこの作品の事件をなぞったような作品である「殻ノ少女」をプレイしましたが、やはり、「京極堂」というキャラクターの有無は相当大きい。
めちゃくちゃ読んでて楽しかったです。




真相(ここから未読の人はネタバレ注意)

第一の事件 柚木加菜子殺害未遂事件

犯人は楠本頼子。

・須藤が柚木加菜子に接触し、「柚木家の真実」を告げる。
・ショックを受けた柚木加菜子は友人である楠本頼子を誘って家出を計画
・相模湖へ向かう途中で、楠本頼子が発狂してホームから突き落とす
・柚木加菜子は美馬坂幸四郎の研究所に移送され「延命処置」を受ける。

まじでこの女楠本頼子って女クズ過ぎるだろ……

この美馬坂幸四郎は、単に僕らとは違う価値観を持っているだけで、それについて、僕らは糾弾も摘発も出来ない。本来なら僕は、こんな道化の役をするべきではないんだ。

柚木加菜子誘拐「未遂」事件

犯人?は柚木陽子と須藤
・柚木陽子が願望混じりで脅迫状を作る(実行するつもりはなかった)
・それを木場が見てしまって大事になる。
・須藤が偽装誘拐を行う。


須崎殺害及び加奈子誘拐事件

犯人は雨宮
雨宮は「柚木陽子」ではなく「柚木加菜子」が好きだった
・柚木加菜子の両足は雨宮が湖に葬る。ただしその際に右腕は事故で紛失。
・焼却炉にやってきた須藤から左腕と柚木加菜子の胴体を奪って逃走する。


連続バラバラ死体遺棄事件

犯人は久保
・雨宮に「匣の中で生きている柚木加菜子」を見せられた久保が狂う。
・その後柚木加菜子は死亡する。
・雨宮はそのまま逃亡。

大地を一人往く、満ち足りた男。背負った匣の中には、きれいな娘が

「魍魎の匣」

犯人は美馬坂幸四郎。

教授。あんたのせいでここにいる全員が魍魎に当たってしまった。魍魎はとらえどころのない化物だ。頭を抑えれば尻尾が逃げる。尻尾を抑えれば切られてしまう。退治するには、全部集めて丸ごと飲み込むしか無いんですよ。

まとめ 魍魎落としとは何か

まさか、京極堂は、美馬坂から科学を祓い落とそうとしているのか!ならば、魍魎とはなんだ?京極堂はなぜ平気なのだ?なぜこの黒衣の男は、彼岸へ行かないのか?

魍魎とはな、関口。境界だ。軽はずみに近寄ると、向こう側へひきずりこまれるぞ。そして科学もまた境界だ。美馬坂さん、あんたが向こう側に往くのは良いが、せめて陽子さんを残していけ!

魍魎はね、人に憑くものではないんだ。だから落とせない。

魍魎のそもそもはね。沢川にいて、人の声を真似て人を惑わすものだ。形はあっても中身はなく、何をするでもない。惑うのは人のほうだ。私は、心の中心を揺さぶって、余計なものをふるい落としたのさ。

いずれにしても関口くん、魍魎は境界的なものなんだ。気をつけたほうが良い。あちら側は、特に君のような人間には蠱惑的だぜ。

魍魎の匣(1)【電子百鬼夜行】[Kindle版]

京極夏彦 講談社 2012-09-28
売り上げランキング : 16457
by ヨメレバ



おまけ 「殻の少女」について

▲「殻ノ少女」感想その1 : ネコしせんlive!!!
▲殻ノ少女 感想その2 あれ?魍魎n(ry : ネコしせんlive!!!

http://akariingirlieland.blog.so-net.ne.jp/2014-06-16

結末は京極作品とは全く異なるものですし、一見関係のない登場人物たちの過去というピースがすべて綺麗にハマって収まっていく様子はとても気持ちがよかったです。また「朽木冬子の依頼」と「女学生バラバラ殺人事件」が徐々にリンクしていく様子の描き方はとても素敵でしたし、引き込まれました。