の続き。たーちゃんさんセミナーレポート第二回です。
1回目では「初心者はまずETFから。ETFで基礎を身に着けたうえでさらに上を目指したい人が次にチャレンジするのがバリュー株投資」というお話をしました。
今回はいよいよ「バリュー投資」の説明になります。
- バリュー投資の考え方の根っこは「価値があるものを価値より安い価格で買う」という考え
- 企業価値の算定を実際にやってみる
- 企業価値の計算1:まず解散価値から
- 企業価値の計算2:企業の収益力の評価
- 結局、バリュー株投資ではどういう株を持てばよい?
- まとめ バリュー投資は「確実性」を重視する
バリュー投資の考え方の根っこは「価値があるものを価値より安い価格で買う」という考え
ある意味、日本人にはめちゃくちゃなじみが深い考え方です。
「ちょっとでもいいものを、ちょっとでも安く買う」
といえばわかりやすいですよね。
ただ、多くの人は、なぜか投資の時にいつもやってることができなくなるのです。なぜそれが難しいか、も含めて理解していきましょう。
まず価値と価格の違いを意識しよう
・価値=何かを買うときに手に入れるもの
・価格=何かを買うときに支払うもの
ここを混同してしまうと「値動き」に翻弄されます。そして、値動きに価値がついていってるような錯覚をしてしまうわけです。
その錯覚が多くの人を巻き込んだのが2年前の「仮想通貨」バブルでした。誰一人価値について考えることをせず、ただただ価格だけを見て価値のないものを欲しがる。その結果はご覧の通りです。
これに対して、値動きに一喜一憂することなく「価値」の中身を理解して「確実な価値よりも低い価格で買う」に徹するのがバリュー投資です。
バリュー投資最重要の概念「安全域」を理解する
これも難しく考える必要はありません。「自分が算定した価値よりもどれだけ安い価格で買えているか」を意味する言葉です。
この安全域を意識することで、普段の値動きに振り回されずに価値の側に着目するという「健全な投資」ができる。
「安全域を守る=必ず価値より安い価格で買う」を徹底するバリュー投資においては、日々の値動きよりも「企業価値」をどれだけ正しく見出せるかに力を注げばよい。
「企業価値」を三つに分解する
じゃあその肝心の企業価値はどうやって算定する?という話ですが、これは三つに分解して考えます。
・保有資産(解散価値)
・将来価値(将来の収益力)
・バイアス
このうち、特に確かな解散価値に重点を置くのがバリュー投資になります。
解散価値を厳しく厳しく見積もって、そのうえで安い!と思う株を買う。
企業価値の算定を実際にやってみる
当日のセミナーでは具体例として
◆瀧上工業
◆丸八HD
◆燦HD
の三社についてワーク形式で解散価値を算定するワークを実施しました。
企業価値の計算1:まず解散価値から
まずセミナー会場で実際に解散価値の計算をワーク形式で行いました。
①実際にそれぞれの会社のB/Sを見て一つ一つの項目に、たーちゃんさんが指示した係数をかけます。
・現金や有価証券などにはそのまま1をかけ。
・土地や機械などには0.2~0.5をかける。
・のれんなどは完全に0扱いです。
②こうやって各項目の数値について厳しく資産価値を計算したうえで合計します。
③逆に含み土地資産などで、簿価よりも地価が上がっている場合は正しい時価を計算します。
(古くからある企業などでは、戦前から都心付近に土地を持っている場合があったり
使わなくなった工場跡地などが帳簿上二束三文の価値で計上されている場合があります)
④最後に、現在の時価総額に対して、この合計が勝っているか勝っているかを見ます。
こうやって「解散価値」を見ると、
・帳簿上PBRが低いように見えた企業でも実はそんなに割安ではない、とか
・逆に資産をすごく持ってるのにそれが全然株価に反映されておらずすごく安い(含み資産銘柄)
ということわかってきます。
この時点で「この会社は解散価値的に見て本当に割安なのか?」を考えることになります。
これで時価総額が資産価値よりはるかに低ければ、「資産価値に比べて割安」といえます。
バリュー株投資については大きく2パターンの算定方法を使うことを覚えておく
・資産バリュー株(解散価値を自分なりの基準で計算)
・ネットネット株(グレアムが元祖。これを現在流にアレンジする)
詳細についてはグレアムの「賢明なる投資家」を読むか以下の雑誌を読むなどしてみてください。
賢明なる投資家 ? 割安株の見つけ方とバリュー投資を成功させる方法
- 作者: ベンジャミングレアム,土光篤洋,Benjamin Graham
- 出版社/メーカー: パンローリング
- 発売日: 2000/09
- メディア: 単行本
- 購入: 1人 クリック: 38回
- この商品を含むブログ (18件) を見る
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2017/05/20
- メディア: 雑誌
- この商品を含むブログを見る
日経マネー 7月号よりメモ お値打ちバリュー株の選定方法 | 勝たない投資
「ネットネット株」とは?ベンジャミン・グレアム氏が提唱する資産価値評価の考え方&計算方法 | バリュー投資とバリューライフ
これらは本当に基礎的な話なのでいろんな人が実践しています。「これを知っただけで勝てるようになる」などと勘違いしてはいけませんが、だれが計算しても同じになる数値をもとにしていて、かつすぐに変わることがない資産をベースにしているので防御力は格段に上がります。逆に言うと、知らないとめちゃくちゃ防御力が低い、ということになりますので、絶対に知っておくべき基礎だと思ってください。
投資界隈では「割安」という言葉が、不明瞭な意味で使われがちなので注意!
ところで、twitterで株関連の話題を見ると日々いろんな株が割安だといって煽られていることに気づくでしょう。
しかし、これが「何に対して」割安か、というのを理解できないなら絶対に手を出してはいけません。
上で計算したのは「資産価値」に対しての割安です。これは先ほども述べたように誰が見ても同じ基準でわかります。
一方twitterで煽られる割安はたいてい「将来価値(未来の成長期待)に対して割安」といっています。
この場合不確実な情報や、場合によってはただの憶測や風説をもとにしている場合すらあるので要注意です。
これを自分でしっかり判断できるようになりましょう。
「資産価値が割安」なだけでは材料として弱いのでもう一ひねりする
資産価値に比べて現在の会社の時価総額が割安な株を買えば絶対に儲かるかというとそうではありません。だいたいそういう株は成長を期待されていないケースが多いからです。損はしないかもしれませんが、ただ安いだけの会社の株を買っても値上がりするまで5年~10年待つことを強いられることに。
解散価値に着目する資産バリュー
— あきら (@hamutaro2294) 2019年2月18日
適合する企業の大半は
① 流動性に乏しい
② 知名度が無い
③ 株主還元に消極的
④ 同族企業で本業がイマイチ
で初心者の方には抵抗があるかと
【行列が出来るケーキ屋】では無く、【客を見かけないが何故か潰れない金物屋】が良いと例えれば分かりやすいかも pic.twitter.com/8EHwa31e6U
・そのままでは上がらない。安いのに放置されているのはそれなりに理由はある。
・何かの「カタリスト」があった時にはじめて買われる。
・割安だからという理由だけで買われるのを待つと5年~10年かかることも。
なので、単に資産バリューがあるというだけでなくもうひとひねり必要です。
例えば有価証券報告書で経営指標を見て
1:売上がきちんと伸び続けている
2:従業員は増えていないのに売り上げが伸びている
3:投資CFを確保した上でFCFが大きくプラスになっている
4:キャッシュ回りが良い(売上回転率が良い)企業
といった要素を加味していく必要があります。
しかし、大前提としては、資産価値が高いのに時価総額が割安の株を探すということをスタートラインにしましょう。
このあたりを考えるのが面倒だという人は、ETFに戻ったほうが良いでしょう。
企業価値の計算2:企業の収益力の評価
さて、資産価値はだいたい分かったと思うので、次は2つめの企業の収益力を評価します。
様々な計算方法があり、実際にここの評価次第で株価に大きなブレが生じる
今回はあくまでバリュー株投資の話なので詳細は説明しませんが、普段「PER」などを見て投資をしているならば、この計算方法の仕組みは一通り理解する必要があります。
そうでなければ「なぜそれが割安といえるのか」がわからないですよね?
①DCF法(金利をベースとした考え方)
②割引率で計算(どのくらいのリスクプレミアムを取るか?)
③成長率をベースにして将来価値を計算する。
アナリストが書いているα(国債金利)、β(リスクプレミアム)というのは割引率の話です。
いずれにせよ結論はそれほど大きくは変わりません。
・高成長企業なら「フリーキャッシュフロー」の15倍程度
・成長なしの企業なら「フリーキャッシュフロー」の8~10倍程度
が収益力によるバリュー算定になります。これよりも時価総額が低いなら割安です。
ちなみにこのフリーキャッシュフローですが、税金のことを考えて「ざっくり経常利益の6割」として計算するくらいでよいでしょう。
「収益力評価」は素人には難しい
しかし、メカニズムくらいは理解できるにしても「収益力評価」に関しては個人がプロに勝つのは難しいです。プロがカバーしてない小企業で探すならともかく、そうでないなら企業レポートを見たほうが良い。(※ただし「目標株価を無視して」中身をしっかり見ないと意味がない)。とにかく初心者は成長株にうかつに手を出すのはやめましょう。
結局、バリュー株投資ではどういう株を持てばよい?
すごくざっくりいうとこんな企業です。
・営業利益率が10%以上(営業利益率が低い場合、PERはあんまり見ても意味がない)
・営業CF>純利益(RIZAPはこの面で失格だったわけですね)
・上記二つを満たしたうえで、PERが一桁。
この3つの条件を満たした株を
・「相場の下落時に買って」(ここが死ぬほど重要です!だからたーちゃんさんは先にバリュー投資よりも先にETFへの投資を通じて相場の下落時をつかむことを推奨していたわけですね)
・「5~10年持ち続ける」
この二つが出来れば、安全域を維持しつつ、3~4年の間に価値の水準まで株価が是正される(最近では同業他社による買収やTOBなどがきっかけ)タイミングで
大きく利益を上げることができますし、そうでなくとも安心して配当を得ることが出来ます。
まとめ バリュー投資は「確実性」を重視する
最後に復習しておくと、バリュー投資というのは
・「現時点で確実に成長し続けている企業」が
・「価値より安く売られている時や市況の関係でたたき売られている時」に買って
・確実に株価の是正が起きる5~10年単位で持ち続ける
という投資法になります。
この逆は
・「将来成長するかもしれない」という不確実な要素に賭けたり
・「業績につながらないかもしれないがこのテーマやトレンドは大化けする可能性がある」という期待で
・現時点では価値よりも価格が高いものを売買する
といった投機的な手法になります。
私は後者が必ずしも悪いとは思わないです。これはこれでcisさんが言われていた順張りになっている間は期待値が高いです。
- 作者: cis
- 出版社/メーカー: KADOKAWA
- 発売日: 2018/12/21
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログを見る
しかし、それはあくまで上級者になってからのお話です。初心者のうちから「ベストな投資法」なんてものを模索する必要はありません。安全性が高い堅実な投資を目指しましょう
とにかくやってはいけないのは「全然中身わかってないけどなんとなくすごそう」「これはテーマ株だからいけるはず」くらいの理解しかないのに割高状態の株を逆張りで買うことです。日本の投資家は大部分がこういう投資パターンだそうです。twitterではこういう手法で勝ってる人が目立ちますがそういう人はマレです。マネするものはもっと難しいです。自分で詳細な分析ができないうちは、この投資パターンは負けやすいんだ、ということを理解しましょう。そして「確実性」の高い所からスタートして徐々に「不確実性」を克服していく、という風に段階を踏んで成長していきたいですね。
まぁそのなんだ。twitterの煽り銘柄、本当に危険だから少なくとも下げ始めてからは絶対に乗らないほうがいいです。
……というわけで、2回目でバリュー投資の「資産価値の算定」と「収益評価」まで終わりました。3回目に進む前に、補足的な話を一つはさみ、続けて3回目につないでいきたいと思います。
- 作者: ピーターリンチ,ジョンロスチャイルド,Peter Lynch,John Rothchild,三原淳雄,土屋安衛
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2001/03/01
- メディア: 単行本
- 購入: 8人 クリック: 68回
- この商品を含むブログ (47件) を見る
www.tyoshiki.com
可能であれば、3に進む前にこちらをどうぞ。
www.tyoshiki.com
とりあえず先に最後まで読みたい人は3をどうぞー