まずこのツイートについては「誰かさんの俺ガイル感想」並に的外れというか真逆の感想だなとは思うものの別にいいじゃん。私はこういう「個人の感想」を言ってるだけの人を寄ってたかってぼこぼこにするのはあんまり良いことだと思いません。「宇崎ちゃん」「茜さやかさん」などの話題が盛り上がってる状況であることを考えても、こういうの見つけてきて叩くというのはオタクの悪いところや。
*1
正直こうやってちょっとした過失をやり玉に上げてボコボコにするのって、ネトフェミさんが普段やってることと何が違うの?って言いたい。私は嫌い。逆に言うと、ネトフェミさんやはてなのリベラル勢は自分がやってるのってこういうことだぞと自覚してほしい。
女性から女性に対する「スラット・シェイミング(slut-shaming)」について
ただ、これは一応フェミニズムの領分であり、恋柱さんをそういう扱いするのはslut-shamingに該当するかなと思います。
セクシュアリティに関して期待される行動や外見に背いていると考えられる人たち、特に女性と少女を非難する行為である
スラット・シェイミングは男性と女性の両方によって行われる。女性たちや少女たちの間では、性的な嫉妬心を「社会的に許容されうる方法で、女性や少女の性的表現を非難する行為」へと昇華する手段として機能している
女性隊員の生き方は大きく言って2つの生き方がある。ビッチ=生意気女と、スラット=尻軽女だ!
生意気女は大変だぞ!常に期待以上の海兵隊員であらねばならない。つっぱって生きるのはツライぞ、覚悟しておけ!
一方、尻軽女はとっても簡単だ。放っておいても周りにちやほやしてもらえるからな。ただ、忘れるな。一度尻軽女と思われたら、二度と真の海兵隊扱いはされない!
こういうのはフェミニズムの目指す方向の「反対」の行為なのにフェミニストを自称する人が無自覚にやっちゃうのはちょっとおいおいって思うかな?
何のことはなく、「倫理」とか「規範」みたいなことで苦情を言ってたのは、2012年段階ではおっさん側だったわけです。今のフェミニズムさんはそういうおっさんのダメなところを真似しているのか、家父長制的な価値観に汚染されたのかは知りませんが数年前まで、団塊世代の男性たちがやってたことを、女性たちが自分たちのものとして振りかざしているだけなのです。
すごく嫌な言い方をすると、この資料によるならば今のフェミニズムの広告に対する苦情のつけかたは「団塊世代のおっさんのおさがり」ということになります。
まぁフェミニズムは一人一派ですし、こういう人がいてもいいのかもしれません。
と、前置きはここまでにして、恋柱さん(甘露寺蜜璃)の話をします
- 作者:吾峠 呼世晴
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2019/01/04
- メディア: コミック
多くの人が指摘する通りですが鬼滅の刃はジェンダーロールという面で見れば無茶苦茶古臭い作品です。
はっきりと家父長制が描かれているし、主人公も時代相応の男尊女卑観の持ち主です。女性の社会進出、なにそれ美味しいの?であります。「大正時代」が舞台なので当たり前ですね。ここで男尊女卑がない社会をえがいていたらそれはただの妄想になってしまい大正時代の意味がありません。*2
というか、少女漫画では「ジェンダー云々が煩わしい、むしろそういう男尊女卑歓迎」という需要があるのかどうか知りませんが、少女漫画で大正ロマンものが常に一定数は人気になってるような気がします。(少女漫画を好む読者にとっては明治とかなろうはもう「異世界」みたいなもんかもしれませんが、異世界ものは異世界もので人気があるので、どういう区分けなのかはよくわかりません。わかる人いたら教えてほしい)
恋柱さんは鬼殺隊という特殊な環境家において、特殊な才能を持つがゆえに自己実現を果たしている女性
さて、主人公が属する鬼殺隊は「鬼殺し」という目的に特化して結成されており、この当時においては能力さえあれば男女を問わないという非常に珍しい組織です。その中でも蟲柱さんと恋柱さんはたぐいまれなる体質の持ち主なのでこの時代においても活躍しています。が、それ以外の隊員はおおむね後方支援や補佐役についている者が多いです。鬼殺隊は目的に特化しているからこそ当時のジェンダーロール観には縛られませんが、逆に能力至上主義ゆえに男女には明確な差が出ます。
ミツリさんはフェミニズムの理想(「私は私のままで生きたい」)に近い……のだろうか?
ミツリさんも最初は当時のジェンダーロール観に沿った「普通の女の子」として生きようとしました。
でも彼女は、そのことにものすごく葛藤します。
「いっぱい食べるのも、力が強いのも、髪の毛も全部私なのに。
私は私じゃないふりをするの?
わたしがわたしのままできることや、人の役に立てること、あるんじゃないかな?
私のままの私がいられる場所ってこの世にないの?
私のこと好きになってくれる人はいないの?
こんなのおかしいよ。おかしい……」
大正時代の女性も、1982年生まれの女性も、同じ問いをずっと発し続けてきたわけですね。
- 作者:チョ・ナムジュ
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2018/12/07
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- 作者:キム スヒョン
- 出版社/メーカー: ワニブックス
- 発売日: 2019/02/23
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
そんな彼女が、自分らしく生きられる場所を見つけたのが鬼殺隊だったというわけです。
お父さん、お母さん。私を丈夫に生んでくれてありがとう。
鬼殺隊ではみんなが私を(わたしのまま)認めてくれたの。
鬼から守った人たちはね。涙を流して私にお礼を言ってくれた。
イグロさんがね、私に縞々の長い靴下をくれたのよ。任せといて、みんな私が守るからね。
仲間は絶対死なせないから!鬼殺隊は私の大切な居場所なんだから。
彼女自身に関しては非常にいい話ですよね。
ただ、さっきも言ったけどこれって「鬼殺隊」という特殊な場所でかつ彼女が戦闘能力が異常に高いからこそ実現できた話ですね。
これだとpapa told meと同じ問題を抱えることになるかなーと思ったり。
現代のフェミニズムは、そうでない人でも「私は私らしく生きてもいいんだ」って思える社会を目指すものだと思います。*3
それはそれとして、恋柱さんはなんでこんな服着てるんですか?
マンガの時はそれほど気にならなかったけど、アニメだと結構な違和感ありますね彼女。
個人的にはぱっと見の印象だけなら宇崎ちゃんよりこっちの方がうえーってなる。
その理由は単行本12巻にあるから自分で確かめてみようね。(by 前田まさお)鬼滅の刃は、前にも書いたけど単行本による「裏設定の補足」がめちゃくちゃ充実しており、作者さんがほんとに一人一人のキャラのこと大好きなんだろうなーって思います。
*それはともかくとして、鬼滅の刃好きな人はクレイモアも読んでほしい
*1:ただし、誰かさんが禁書目録について適当なことを言ってるときだけはこの原則完全に無視してボコボコにします
*2:過激派フェミの人もさすがにそれは理解してるのかさすがにこの作品で現代のフェミ文脈を押し付けるみたいなアホはあまり見たことがありません。ネットフェミの人、基本的に女性を敵に回すのを徹底的に避けており、既存のジェンダーロールでも女性に人気のものはほぼ批判しないという傾向があります。だからこそ安全に叩けるオタクをターゲットや「男性向けCM」にロックオンしています。まぁネトフェミも人気商売だからね、仕方ないね
*3:逆にこれはこれで「自由からの逃走」を引き起こしそうですけど。今も私らしさを求めてるはずのネットフェミの皆さん「昔の型」に自らハマりに行ってる人多いですからね。自由の取り扱いはすごい難しいですよね。まぁそれはまた別の話。