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「命令されなきゃ、憎むこともできないの?」(ブルーアーカイブ#3 エデン条約編3.私たちの物語)

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AVにおける本番行為の撮影は違法なのかどうか問題 →本番行為の撮影自体を明確に違法と定めたルールはないですね。デマに気を付けて

何度も言うけど、法律問題については脊髄反射でコメントするのやめてちゃんと調べてから書こうね。


AVに関して議論の対象となる条文

今までは以下の3点が主な議論の対象でした。

・売春防止法2条(売春の定義)
・刑法175条(わいせつ物頒布等の罪)
・労働者派遣法 第58条 / 職業安定法63条(公衆道徳上有害な業務の規定)

他にも
・職業安定法四十四条(スカウト行為の禁止)
・刑法177条(2017年からAV出演強要は強姦罪が適用されることになった)

などが話題に上がることがあります。


大前提として、AVって「歴史がものすごく浅くて法整備がきちんとしていない」と考えるべき

www.tyoshiki.com
これで初めて知ったんですけど、言われてみたらAVって日活ロマンポルノとかの後にようやく出てきた業態であり歴史としては結構新しいんですよね。それゆえに、法整備が全然できてない。

グレーゾーンをついて、今までAV出演強要問題がいろいろといわれてきました。

女性は平成21年に別のモデルプロダクションからマークス社を紹介され、当時の社長に「グラビアモデルとして契約してもらう」と説明され、契約書にサインした。女性は契約書をよく読ませてもらえず、写しも受け取っていなかったが、「成人向けの作品も出演する」とする文言が書かれていたという。その後、女性はAVの撮影現場に連れていかれ、女性が撮影を拒否すると、「サインしたじゃねえか」「スタッフがもう集まっているだろう」「違約金を払え」などと数人で取り囲んで数時間にわたって軟禁状態にし、撮影を強行。1本撮影すると次々撮影することになり、約5年間出演させられた。知らないうちに無修正の作品も出回っており、弁護士らとともに警視庁に相談した。
 長年業界に携わった関係者によると、こうした強引な撮影はほかのプロダクションやメーカーでも横行しているという。契約書や台本の内容は曖昧で、女性に何をさせるか知らせないまま事を進めていくのが常套手段。「最近は利益を出そうと、行為の過激さや奇抜さがエスカレートする傾向にある。もう辞めたいと泣いていた子は何人も見た。人権侵害と言われても仕方ないケースもある」

https://www.sankei.com/premium/amp/160618/prm1606180026-a.html

というわけで、この機会にちゃんと議論されて、女性がきちんと保護されるルールを作ることはとても重要だと思います。ただ、そのためにも議論に参加する人は最低限の知識をもって参加すべきかなと。道徳論でキーキー喚き散らすだけの人は議論の邪魔だし、わざとではないにせよデマをまき散らす人も結構いるし、そういう人を排除しないとろくな議論にならないかなと。


まず、売春防止法のほうはあまり問題になってません

anotherpro.jp

パチンコと同じ三点方式で建前上回避できることになっているからです。

売春法で問題になるのは、セックスを提供することで、提供された側からお金を受け取ることです。AVに出演する俳優さんは、出演料という名目でプロダクションまたはメーカーから金銭を受け取りはしますが、セックスをする女優と男優の間で金銭のやりとりはありません。

セックスの対価として金銭が支払われているのではなく、管理売春に該当しません。

今まではとにかく175条の「わいせつ物」の定義があいまいであり、警察の判断次第で有罪と無罪が入れ替わるという問題がありました

なので、ネットではよくこの刑法175条廃止を求めてる人がいます。
モザイクは良くも悪くもわいせつ系コンテンツの制作者と警察の妥協点というかDMZみたいになっておりますこれを撤去するとなると「AVの本番行為の撮影自体が適法か違法か」をはっきりさせる必要が問題にもろに踏み込むので、今まではなあなあになってました。んで、今回のAV新法整定にあたり、この際だから「AVの本番行為の撮影自体が合法なのか違法なのかも決めてしまおう」という話になっています。


ネットではこの3つの条文をめぐる話がごっちゃに議論されて、キメラみたいな形の誤解が生まれている気がする

これに対して、「本番行為はアウトだが、モザイクの裏で本番行為はないことになってるからセーフ」という意見を多数見かけましたが、たぶんこれ、いろんなものをごっちゃにしていると思います。問題は切り分けて考えたほうが良いのではないでしょうか。

むしろ現在明確に違法という規定があるのであれば、下のニュースのように、AV業者を摘発する際に「労働者派遣法」を使う必要がないし、今回本番行為自体の違法化(合法化への反対)を熱心に叫ぶ人がいるとも思えません。「現時点では明確な規定がないグレーゾーン」で間違いないです。


www.sankei.com
こっちのケースは労働者派遣法違反(有害行為への派遣)のケースです。

実際の行為は同法の「公衆衛生上有害な業務」として規制されている。作品のモザイクの有無は関係ない。

おそらくこのケースを指していると思われますが、「本番行為の撮影そのものが違法」とはなってませんね。というかそれであれば、いかなる迂回措置を取ろうがアウトなので、むしろそうではないと考えたほうがよいでしょう。

detail.chiebukuro.yahoo.co.jp


今回まず優先して議論されるべきは「AV出演を強要された女性を望まぬ出演から守り、すでに出演を強要された人をどう救済するか」だと思います

今までは明らかに被害者への救済が弱かったと私は思います

今までにも未成年でなくとも「出演強要」には強姦罪が適用されるようになったり、職業安定法44条によってスカウト行為が禁止されたり、労働者派遣法でAV出演者を守ろうという動きはありました

この適用は救済措置としては弱く、現状は未成年者契約の取消権(民法5条&民法126条)くらいしか保護規定がなかった。
news.livedoor.com


なので、最優先に議論すべきは被害者の救済だと思っています。


なので、「AVにおける本番行為の撮影は違法なのかどうか問題」の議論も重要とはいえ、個人的には「その議論を本当に今回やる必要ある?まず迅速にAV新法を可決したほうがよくない?」って思っています。

とはいえ、議論をする機会が今しかないという気持ちもわかる。なので、「ちゃんと理解した人の間」で議論されるのはよいことかなと。正直北原みのりさんとか石川優実さんにはそのあたり期待できないかなあ。実際現状の論点をちゃんと我々に説明しようとしてないしね。相変わらず態度が傲慢で嫌になるなあ。陣営が違うだけで自民党とやってることあんまり変わらなくない?


というわけで、ぶっちゃけこの問題、単純そうに見えて結構ややこしいです。この記事で述べてきたような話は当然理解した上で、さらに複数の法律を横断してきちんと整備する必要があるので、職人芸みたいな世界になります。当然私たちのような「素人」の出る幕ではないような気がしますね。 とりあえず私たちのような素人はよく知らずにお気持ちを表明する前に、ちゃんと今のルールや運用を把握するところから始めたほうがいいのでは?


自分がアダルトビデオをほとんど見たことがないせいで(見たことはあります)、全然興味がなかったんだけど、ある程度歴史的なところくらいは理解したほうがいいのかなあ……



おまけ 関連条文

刑法175条

1 わいせつな文書、図画、電磁的記録に係る記録媒体その他の物を頒布し、又は公然と陳列した者は、二年以下の懲役若しくは二百五十万円以下の罰金若しくは科料に処し、又は懲役及び罰金を併科する。電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録その他の記録を頒布した者も、同様とする。

2 有償で頒布する目的で、前項の物を所持し、又は同項の電磁的記録を保管した者も、同項と同様とする。

売春防止法2条

(売春の禁止)
この法律で「売春」とは、対償を受け、又は受ける約束で、不特定の相手方と性交することをいう。

労働者派遣法 第58条

公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務に就かせる目的で労働者派遣をした者は、一年以上十年以下の懲役又は二十万円以上三百万円以下の罰金に処する。

職業安定法第六十三条

次の各号のいずれかに該当する者は、これを一年以上十年以下の懲役又は二十万円以上三百万円以下の罰金に処する。
一 暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によつて、職業紹介、労働者の募集若しくは労働者の供給を行つた者又はこれらに従事した者
二 公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務に就かせる目的で、職業紹介、労働者の募集若しくは労働者の供給を行つた者又はこれらに従事した者