とある人が、ゆるきゃんのシーンを佐々木倫子風に描くパロディ絵を描かれていて
それに対して「著作権侵害ではないか」という指摘をするコメントがありました。
「もし佐々木倫子作画でゆるキャン△を描いたら……」が違和感なさ過ぎてすごい。面白いんだけど、流石に原作と同じストーリー、同じセリフはダメでしょ
2023/04/07 20:48
「もし佐々木倫子作画でゆるキャン△を描いたら……」が違和感なさ過ぎてすごい。訴えられればいいのに。
2023/04/08 06:35
今回の件を比較のために引用するとこんな感じですね。
元のマンガはこんな感じ。(ゆるキャン△の1巻です)
佐々木倫子風はこんな感じ。
はい。たしかにこのシーンは元のシーンやセリフがそのまんま引用されてますね。
これって実際どうなんでしょうね?ちょうどAIが勝手に学習してパロディみたいな絵を大量に生み出している時代ですが、これに対して日本の法律はどうなってるのかはちょっと興味あります。
(なお、97%の常識ある人にはいちいち言うまでもないですが、今回の件に関してゆるキャンの作者が訴える可能性は考えられないので、思考実験としてお付き合いください。*1)
「パロディ・モンタージュ写真事件」について
で、これは著作権侵害に当たるかという話ですがこのような判例がありますね。
結論部分だけ引用すると以下の通りになります。
本質的な特徴は、写真部分がアマノ氏の写真のなかに一体的に取り込み利用されている状態でもそれ自体を直接感得しうるものだから、アマノ氏による白川氏の写真の利用は、同一性保持権を侵害すると判示
そもそも日本の著作権法は、パロディという屈折した表現形式を想定していない。ある表現の自由な二次的利用が法律のもとで許されるのは引用のみであり、「元ネタ」を全面的に、おおっぴらに使用しつつ別の意味を重ねようとするパロディという形式を扱うための言葉を、法は持ち合わせない
一方で、アメリカでは、パロディに関して「フェアユース」の観点から認める判例が出ており、パロディにも市民権が与えられています。
en.wikipedia.org
日本でも、東京高裁ではそのフェアユースの概念を適用してパロディを認めようとしていましたが、少なくとも現在でも「写真のモンタージュ」みたいな手法だと同一性保持の権利を侵害するとして違法となるようです。さすがにこれだけ二次創作が盛んになってる現状、1971年の裁判の判例が今でも生きているというのはどうなんでしょうね……。
あと、今回の場合、同一性保持権を侵害されたと主張しうるのは「ゆるキャン△」側?それとも「佐々木倫子概念」側?
この辺りは、法律に詳しい方にぜひ検討してみてもらいたいと思います。
普通に考えれば、訴えうる可能性があるとすれば「ゆるキャン△」側でしょう。
しかし今回の件、すくなくともはてなブックマークで文句を言ってるのは佐々木倫子先生のファンのばかりでした。「〇〇が好き」というのを表現する際に一番むいてない表現をしていて厄介オタだなという印象を受けます。「自分の解釈と違うもの」に対する非寛容さがえげつなくて、うざいなーって思いましたね。
要するに「文句を言いたい」が先にあって、よく知らず、よく考えずに著作権の話を持ち出しているように思います。
はてブ民の皆さん、こういう思考の流れがデフォルトになってる気がするんだよな。非常に危険なのでやめたほうが良いような気がします。
最近はO田弁護士みたいに、弁護士の肩書がある人でも主義主張のためなら「宇崎ちゃんのポスター」に対して環境セクハラ「のようなもの」という発言をして誤謬を誘って炎上を引き起こすような時代です。
「気に入らない」の感情に理屈付けしてくれるならどんな雑な理屈でもよい、みたいな考え方をしているとその手の悪い大人に利用されるだけだと思います。怖いから気を付けよう!
*1:これをいちいち説明しないとマジでコメントで書く異常者が3%くらいいるのがはてなブックマーク