百合ミステリ「いつか私は、君を裏切る」の1巻で紹介されたエピソード。
被害者学について
従来の犯罪学ではもっぱら加害者の側面から犯罪原因を究明しようとしてきたが,これに対し被害者学は,犯罪における被害者の重要な役割に注目し,犯罪にいたる過程における被害者側の有責性の度合い,犯罪を受けやすい被害者の特性などの研究を行なって独立した学問分野を形成するにいたった。近時においては,被害調査や犯罪認知の過程における被害者の役割,刑事手続における被害者の地位なども研究の対象とされている
被害者学は、ともすれば感傷的なものになりがちな被害者のイメージをより現実的なものにした。
(1)完全に責任のない被害者(嬰児殺(えいじさつ)や嬰児誘拐における嬰児、無差別爆破事件の巻き添えなど)
(2)責任の少ない被害者(犯罪場面に消極的に参加している。侮辱し心理的苦痛を与えて加害者の害意を誘発した被害者、危険を容易に察知して逃げられたはずであるにもかかわらず犯行地に赴いた強姦(ごうかん)の被害者など)
(3)加害者と同程度に責任のある被害者(自発的に犯罪場面に参加している。嘱託・承諾殺人における被殺者、喧嘩(けんか)口論で互いに挑発しあった結果の殺傷事件の被害者など)
(4)加害者よりも責任のある被害者(被害者の挑発が加害の主たる要因と認められる。相手方の家族を殺すなどと脅したために攻撃された殺傷事件の被害者など。メンデルソーンは無謀運転で自らが死傷した場合をこれに数える)
(5)もっとも責任のある被害者(不法な攻撃を加えたため正当防衛にあって殺傷されたものなど。メンデルソーンは被害妄想による想像的被害者などもこれに加える)というぐあいである。
たとえば、詐欺罪の被害者には軽信型や知慮浅薄型のほかに強欲型があること
尊属殺人の場合は非難に値する態度はむしろ被害者に多いこと
また、窃盗罪にあたる万引では被害者である店舗の側に問題のある例が少なくないこと
少年事件における恐喝・傷害はしばしば「いかれた少年」たちの間で発生することなどが指摘される。
この学問は扱い方を間違えると大変危険なのでおそらく今後もあんまり表に出てこないと思うが、でも必要なシーンもあるだろうなと。
百合ミステリ「いつか私は、君を裏切る」においては、被害者は単なる被害者ではなく、むしろ事件を誘発させ、さらにその事件を利用するやつもいる
「いつか私は、君を裏切る」は百合ミステリだ。
小市民シリーズのように学校内でいろんなトラブルが発生し、それを探偵役のウイコと、助手のアイコが推理していく。
本作の特徴として、犯人の動機よりもいかに被害者が加害者の行動を誘発したかという目線の描かれ方をしているエピソードが多い。
「魔界探偵ネウロ」が犯人を徹底的に特徴的にした作品であるとしたらこの作品はその逆。被害者側を目立つように描き、犯人はあまり特別なものとして描かない。
なぜならこの作品で描かれる事件はどれも「犯罪」として扱えないからだ。
あくまでこの作品は百合マンガであり、「女の子のジェラシーの暴走」「クソデカ百合感情の発露」を描く漫画なので、悪いのは普通の女の子をそんな風にさせる被害者の側なのだ!!(ナンデヤネン)
と言うわけで、本作ではこんな感じで「私達は加害させられた」展をひたすら見せられる。
実際被害者もなかなかしたたかで、中には単なる被害者ではなく、むしろ事件を誘発させ、さらにその事件を利用した者もいた。
とか
みたいに。
あまり話題にならずにひっそり連載終了してしまった印象があるかど結構面白い作品だった。
百合作品およびミステリー作品が読みたい人はぜひ。
おまけ:この作品は、やたらと推し活に対して厳しい・・・。
に対して、そのクソデカ感情をぶつけられたヒロインのセリフは強烈だ。