もともとにゃるらさんの記事をきっかけにして買ってたんだけど
私自身が発達障害(ASD)であることもあり、
語りたいことがたくさんありすぎて記事を書くのを躊躇してました。
でも改めて下の2つの記事を読んで、私も何か書こうと思いました。
みんな、なんだかんだ言って「ケーキの切れない非行少年たち」まだ読んでないでしょ?w
どちらの記事のブコメでも散々話題になっているのに「ケーキの切れない非行少年たち」の内容についてはあまり共有されているとはいいがたいかなと思います。もったいないので概要だけでも記事にまとめたいと思います。
今回はその前段としてよんてんごさんの記事の感想から。
よんてんごさんの記事は数十年前の教育実習の体験について語られたものですが、とても具体的で参考になります。特にこのあたりは実際に現場で体験されないと不気味さがよくわからないと思います。
率直に、言葉を選ばずに言うと、その彼女は他の子と比べ、人に対して異様に接触したがるという"特徴"がありました。
これについてはボランティアの初日から僕も感じていた点ですし、先生たちからも「あの子への対応は気を付けるように」と言われていた部分でした。具体的にいうと、
・すぐに相手の手や身体に触れることが多い
・会ったばかりでも「私、先生のことが好き~」などの好意を口にする
・「家に来てほしい」「抱っこして欲しい」などなど という点です。
幼稚園ならともかく小学校低学年になっても
異常なまでの甘え癖があり、それが受け入れられないと癇癪を起す子供が
特別教室ではない普通の教室でどういう扱いを受けるか、まで想像してもらうとかなり地獄みあると思いませんか。
残念ながら、現在でもよんてんごさんの頃からあまり変わってない
私はつい数年前まで、不登校児や学習困難を抱えた子供たちの世話をする教育現場に参加していました。今でも年1~2回は自治体が運営している「放課後学習教室」や「特別支援教室」に行っています。
https://www.tyoshiki.com/entry/2019/07/23/180903
残念ながら、現在でもよんてんごさんの記事に書かれた内容からあまり状況は変わっているとはいいがたいです。上の2つの記事について、「知的障害」や「発達障害ではないか」と指摘する人は多かったのですが「じゃあ現場の人はどうすればいいのか?」にガイドラインがまったく存在しないからです。
行政はどちらかというと「貧困層の支援」「居場所のない子供たちへの居場所提供」「虐待の疑いがある子供を親から一時的にでも避難させる」という緊急避難レベルで考えており、子供たちの一人一人のケアまで充実させる余裕はないことが多いです。そのため、特に専門性が高いスタッフが対応するなんてことはなく、むしろ普通の大学生バイトがやってたりします。
それでも、「発達障害」についてはある程度認知が広まったことから、現場の先生は子供たちの世話をする前に発達障害児の支援を行っている企業から「ABA(応用行動分析)」などについて簡易的な研修を受けるようにはなりました。でもこれだけでは到底対応できません。
現場の人間「知的障害かもしれないことが分かったとして、だからどうすればいいの?」
「知的障害」を疑い、それに応じた対応をしたくても保護者に「あなたのお子さんは知的障害ですか?検査は受けましたか?」とはなかなか聞けません。
きちんとしたアセスメントができなければきちんとした対応ができない。現場の先生は手探りでいろんな問題プリントを使ってその子供の能力を見て、なんとかその子のレベルに合わせて教育をしようとしたりといろいろ努力はしています。
ここで問題となるのが親
これもよんてんごさんの記事にも書かれていることですが、親がウンと言わなければ踏み込んだ支援ができないのが現状です。
多くの保護者はとにかく「自分が仕事にいってる間目を離せない子供を預かってくれればよい」と思っていたり、あまり問題を認識していないから「子供のレベルに関係なく、とにかく学校の宿題を終わらせてほしい」と思っているケースが多い。
親もとりあえず「目の前の問題(学校から呼び出されたりすることを防ぐ)」を何とかしようとして子供の根本的な問題について考えられない。ひどい親になると「とりあえず時間まで子供を預かって、子供の宿題を先生が代わりにやってくれればいい」というケースもありました。そういう親に対してその要望に応えずに「いや、この子供たちにはこれが必要なんだ」と言おうものならすぐ退会したりします。「親は子供の教育のためにこういう施設に通わせているわけではない」というのが嫌でもわかります。都合のいい託児所でしかない。そもそも、こういう世帯の親は自治体が提供しているいろんな子供支援策に片っ端から申し込んでいるケースもあります。気に入らなかったらやめることに抵抗がありません。
あと、これはあまり書かない方がいいかもしれませんがが「生活保護世帯&子供が障害を持っている」家庭は意外と裕福なケースがあります。各種補助金などを合わせて、一切仕事してないのに世帯年収が500万をこえている家庭もあります。子供たちがiphoneXを持っていたり、毎日おしゃれな服を着てくる場合もあります。事情を知らなかったときは、バイトの大学生たちが格安スマホプランでiphone6あたりをまだ使ってるのと比較して「どっちが貧困世帯なんだ?」と思うこともありました。子供たちの教育や支援のための補助金は、教育や医療に使われずに計画的でない親によってすぐ子供の服や携帯に使われてしまう。「働かなくても生活に困ってないから、子供たちの将来を考えて教育や治療を熱心に頑張ることもない。自治体からいろんなサポートを受けているのに公務員に対しては高飛車な態度をとる」みたいな人を見て、世の中の不条理みたいなのを感じたりしました。
ということを踏まえつつ、「ケーキの切れない非行少年たち」を読んでみましょう。
発達障害や知的障害の子供をお持ちで、かつその子供の将来を真剣に考えている親の方がこの本を読むとかえって絶望する危険があります。
現在、国の制度は「発達障碍者」や「知的障碍者」などの手帳を発行された人にはそれなりに福祉は手厚いです。
しかし、知的障害の検査はかなりザルです。そのためIQが70以上あるが生活や対人関係に問題を抱えやすい人たちや、IQは高いけど遂行機能障害が低かったり認知機能にゆがみがある人は福祉の目からこぼれてしまいます。こういうグレーゾーンの人たちは、社会との軋轢ですり減って、脱落していき二次障害、三次障害、四次障害とどんどん状態が悪化していく。
これに対して本来であれば教育と医療が連携して対応する必要があるのですが、どちらもろくに機能していないというのが現状です。運よく「特別支援学校」の先生に恵まれたりしない限りは、アリジゴクのように下層に追いやられていく危険が高い。
www.tyoshiki.com
このあたりまで読むと本当に絶望しかありません。一方、現実はかなり悲惨な状況ですが、効果のあった支援の実例もあります。本の後半では、知的障害者の抱えてる問題点は何かであるかをしっかりと理解し、どのような支援が必要なのかについて語られています。
どちらかというと、この後半部分だけでもぜひ読んでみてほしいと思います。
次の記事では、本の内容の詳細について簡単にまとめたいと思います。
続きます。
「ケーキの切れない非行少年たち」感想01 まずは身近なところから「知的障害」についての認知を - ワールドエンドエコノミカのアニメ化CFを応援したいブログ