この夜が明けるまであと百万の祈り

マンガアニメ大好き兼業投資家の日記です

公取がコンビニの24時間営業強制に対して「優越的地位の濫用」の適用を示唆した件を覚えてますか?

www.bengo4.com
この件に関してニュースが出たときに記事書いてたんですが下書き状態のまま公開ボタン押すのを今日まで忘れて放置してました。
今日まで塩漬けにしていたので、改めてリマインドとして公開します。

www.asahi.com
www.ryutsuu.biz

ブコメには独禁法でも甘いってブコメあるけど、いやいやそうでもないです。
「会社対労働者」じゃなくて「会社対会社」の関係だということを明確にしたうえで「優越権の濫用」認定もありうると明言したというのはかなりガチなやつです。

「コンビニさん調子に乗りすぎたので公正取引委員会が激おこ」っていう風に見て間違いないと思います
公正取引委員会は「排除措置命令(行政処分。異議申し立てはできるが一度発令したら対応が完了したと認められるまでH×Hのポットクリンみたいにずっと監視され、課徴金命令にも化け得る)」が出せるので、生半可な労基案件や罰金とかよりも企業にとっては重たいです。

https://www.jftc.go.jp/houdou/panfu_files/yuhetu_leaf.pdf

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「優越権の濫用」認定は公正取引委員会激おこを意味します

http://www.aaal.jp/assets/files/yuuetsu.pdf  
特にこちらの資料は「問題にならない場合」が書かれているので重要です。平成21年にセブンイレブンに対して発令した排除命令の案件についても紹介されています。

すでにフランチャイズに関して「優越的地位の濫用」についてのガイドラインはあったけど、公取は今回「コンビニは公取の決めたガイドラインを軽んじているのでより一層の締め付けが必要」と判断した

公取は影響力が大きいので、基本的にガイドラインの再確認からの警告や「個別判断」の立場にとどまるものですが、今回の件で明確に「コンビニ全体」へのけん制をしてきたので、かなり本気だと思われます。私は公取が「メンツ」をかけてきているという風に受け止めています。


ちなみにそのガイドラインはこちら。
www.jftc.go.jp

本部と各加盟者があたかも通常の企業における本店と支店であるかのような外観を呈して事業を行っているものが多いが、加盟者は法律的には本部から独立した事業者であることから、本部と加盟者間の取引関係については独占禁止法が適用される

このガイドラインにおいて、現時点では「優越的地位の濫用」とみなす条件について、広範に「正常な商慣習に照らして不当に不利益を与える場合」と定めつつさらに具体的にブラックリスト方式で以下を指定しています。そのうえで、今まではその他については個別判断とされていました。つまり24時間営業は明文では規制対象ではなかった。
具体的には2008年にセブンイレブンに対して排除命令が出ています

・取引先の制限
・仕入数量の強制(やっとるやろがい)
・見切り販売の制限(今でもかなり制限しとるやろがい)
・フランチャイズ契約締結後の契約内容の変更
・契約終了後の競業禁止

しかし、今後24時間営業に関してガイドラインに追加がされるようなことがあれば、高圧的にフランチャイジーからの要望を切り捨てるような態度をとった運営は即座に「優越的地位の濫用」に当たってしまいます。当然こうなるとコンビニ各社は24時間運営を前提としたサプライチェーンを組むことは当然困難になります。

契約期間中に事業環境が大きく変化したことに伴って、オーナー側が、優越的地位にある者に対して、契約内容の見直しを求めたにもかかわらず、その優越的地位にある者が見直しを一方的に拒絶することが、独占禁止法に規定する優越的地位の濫用の一つの形態である『取引の相手方に不利益となるように取引を実施すること』に該当する場合には、独占禁止法上の優越的地位の濫用に当たる。そうした可能性は排除はされない

ところで、優越的地位の濫用が「なぜ今」認められることになったのか。

はてブでは「遅すぎた」とか「ようやくか」といいますが、法律的にはやはり今だから、だと思います。
今までだってひどかったという意見もあると思いますが、私はやはり最近になって一線を越えたと判断しています。それは以下のような事情です。



コンビニ問題についてはすでに何度か触れてきましたがだいたいこういう流れになっているかと思います。

①出店が飽和しつつある状況で、機械による省力化やオムニチャンネルへの対応が必要だったが各社とも対応が後回しになっていた(AmazonGoと対照的ですね)
最近のコンビニ業界について個人的に気になる5つのポイント - この夜が明けるまであと百万の祈り

②それでも成長を続けようとした結果、現場にどんどん負担を強いる構造になった。

③ドミナント戦略も行き過ぎてカニバリを発生させたり、廃棄問題などで本部とFC側での軋轢も出始めた。
コンビニの「1円廃棄」問題 および コンビニの仕入れ価格問題のメモ - この夜が明けるまであと百万の祈り

それでも、この状況では不利な状況ではあるけれど、たいていのオーナーはなんとか食っていける状態ではあった。本部の様々な施策も、各お疲れ様です。コンビニ店に負担を強いるものではあったけれど同時に売り上げも伸ばすためのものであったから、実態は優越的地位による半強制ではあっても形式上は合意が成立していると見做すことはまだ可能だったようです。個別事例では前から独禁法が適用される事例はあったものの、全体としてFC側が反旗を翻すというほどではなかった。



④この状態でもまだFCに対する不当な対応を改善しないまま、売り上げの伸びが止まり、かつアルバイトの人件費が高騰したことでコンビニ店において採算割れが生じる状態になったのに、これを看過した
よく言われる「人手不足倒産」とは本当のところどういう意味なのか? セブンイレブンの24時間営業問題について考える - この夜が明けるまであと百万の祈り

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このグラフ、コンビニオーナーにとっては「死ね」って言われてるのと変わらない


⑤赤字経営になっている状態で24時間営業が無理になったオーナーの中で死者が出たり、24時間営業をやめたいという明確な要望が出たにもかかわらず24時間営業を強制し、さらに大量の違約金を払わせるぞという「脅し」で従わせる段階になったのはここ最近。
toyokeizai.net


この④~⑤の流れでさすがに公安もブチ切れて「優越的地位の濫用」を示唆することになったと考えています。


「コンビニ会計」を中心とする不利益契約こそがFCの利益の源泉だったのに、調子に乗りすぎてその優位性に今後厳しいメスが入ることになりそう

世間のイメージだとフランチャイズオーナーは純粋な被害者だと思っている人もいるかもしれません。私はぶっちゃけそうは思いません。教育業界の某フランチャイズオーナーにはFC本部よりよほど極悪な人がいることを知っていますし、比較的本部の締め付けが緩い飲食店のフランチャイズなどでは、過労死や労災などは本部直営よりもむしろFC側で起きていたりして、オーナー側が常に無謬で善良な人というイメージで見るのはそれはそれで誤りだと思います

lovely-lovely.net
某外食チェーンでのブラックバイトは、フランチャイジーオーナーによるものでした。

そうでなくとも、店舗数が増えてくると非常に発言力が強くなり、並の本部より立場が上になるところすらあります。このあたり、最近の幻冬舎問題と同じ構図を抱えているといってよいでしょう。*1


一方で、1店舗しか持たないコンビニオーナーは立場的に無茶苦茶弱いのは間違いありません。そういう弱い立場のオーナーに対して圧倒的に有利な契約を結んできたのは大きな利益の源泉でした。特にコンビニ会計がチートすぎるため、売れ残りの心配なくほかのメーカーと比べて商品開発にガンガン投資ができ、さらにものすごい短い期間で商品の入れ替えを行うことで、常に顧客を引き付けるというビジネスができてきた。

コンビニ会計取扱説明書

コンビニ会計取扱説明書

コンビニ会計取扱説明書 2

コンビニ会計取扱説明書 2


正直、わたくしコンビニにはめちゃくちゃお世話になっているので、口が裂けてもコンビニを一概に悪とは言えません。しかし、一度社会的に問題とみなされるとどこまでこの利益の源泉が削られるかわかりません。少なくともいまよりFC本部側に有利になることはまずないでしょう。 私ならファミマかローソンを5年くらいの覚悟で空売りしてみるのも悪くないかなと思ってます。


おまけ FCっていろんなやり方があるよというお話

勘違いしている人多いですが、これはフランチャイズがすべてこういう仕組みではなく、コンビニの場合ロイヤルティ算定の方式が独自なんですね。 同じフランチャイズでもコメダとかは全然やり方が違います。

コメダはロイヤルティ側は決まった額であり、あくまで食材の販売で儲けるビジネスモデルなんですね。ロイヤリティ自体は低いため初期出店コストさえ負担できるなら比較的参入しやすく、そのうえで店舗ががんばって売れば売るほど儲かる。というわけでお互いがウィンウィンな関係「と言われています」。

実際には本部の営業利益率が飲食関係なのに25%くらいあってちょっともうけすぎじゃね?という気持ちもあるのですが、オーナーにうまみが全くないなら実際恐ろしいスピードで出店していったことは説明できないし、あっという間に800店舗を越えており、退店数が少ないことを考えると、うまくいってるのかもしれません。フランチャイズオーナーやってる人の声を聴いてみたいところですね(^^)

*1:セブンイレブンではありませんが、かつてのメガフランチャイジー「CVSベイエリア」の勢いはすごかったですね。コミケ会場のサンクス→ローソンの運営をしていることで有名でしたが、このフランチャイズ向けにだけコンビニ本部が特別に商品を卸すなんてこともありました。逆に言うと、このメガフランチャイジーですらコンビニ事業は赤字になり、事業を大幅に縮小した、ということからも今のコンビニ業界の競争が想像できるのではないでしょうか